前回の記事では「手書き」と「タイピング」、どちらのほうが英単語を覚えるのに適しているのか、という説明をしました。
それでは、その知識を問うテストをする際には、タイピングと手書き、どちらで実施した方がいいのでしょうか。
私はGoogleフォームを使ってタイピング形式の単語テストをすることがよくあります。
その理由は圧倒的に採点が楽になるからです。
しかし、ある日生徒からこんなことを言われました。

生徒A
手書きなら覚えているのに、タイピングが苦手なのでそれでミスをしてしまいます。
これが事実であるならタイピングによる単語テストは公平性のあるテストとは言えなくなります。
では、紙による単語テストを実施すべきなのでしょうか。
正直なところ、紙による採点業務はもうしたくありません。
そこで今回、単語テストをタイピングで実施するのは適切かどうか、自分なりに調べた結果を共有したいと思います。
- タイピング形式で単語テストをしてみたいと思っている教員
- タイピング形式で単語テストを実施しているが、その点数に疑問を感じ始めている教員
- 手書きのほうが生徒にとってはいいと気付いてはいるが、どうしてもタイピング形式で単語テストをしたいと考えている教員
- タイピング形式で単語テストをするときに気を付けなければいけないことを知りたい教員
- 単語テストは手書きで実施した方がいい
- タイピング形式で単語テストをしたいのであれば、準備が必要
なぜ単語テストを手書きで実施した方がいいのか
まず結論から言うと、単語テストは手書きで実施した方がいいということがわかりました。
理由は二つあります。
1.公平性に欠ける
2.手書きの方が生徒のパフォーマンスが上がる可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
公平性に欠ける
日本の生徒はほぼ100%手を使って何かを書くことができます。
一方、タイピングが苦手だと感じている生徒は、現場にいる肌感覚的にもまだ結構います。
テストにとって公平性というのはとても大きな影響を与えます。
例えば、日本人に対して日本語でテストを実施し平均点が80点だったとします。
同じ問題をアメリカ人に日本語で実施した場合、平均点が30点になりました。
その場合、日本人がアメリカ人よりテストの出来がよかった、と結論付けることはできるのでしょうか。
できませんよね。
日本語のできないアメリカ人なのですから、問題を理解するのが困難だった、と容易に推測できます。
そういう意味でこのテストには公平性がありませんし、出てきた点数にも信ぴょう性がありません。
単語テストも同じです。
ほぼ全ての生徒がタイピングより手書きの方が楽というのであれば、テストは手書きで実施した方がいいです。
手書きの方が生徒のパフォーマンスが上がる可能性がある
単語は手で書いた方が覚えやすいのは前回の記事で説明しました。
手で書くことで脳がより活性化します。
本番のテストも手書きですることにより、脳がより活性化されたり、練習時の手の動きや感情などから思い出しやすくなり、結果としてテストのパフォーマンスが向上する可能性もあります。
それでは手書きでテストを実施するメリット・デメリットをまとめていきましょう。
手書きとタイピングで単語テストを実施する場合のメリットとデメリット
手書きで単語テストを実施することのメリット・デメリット
メリット
- 脳をより多く刺激するし、記憶形成に役立つので生徒のテストパフォーマンスが向上する
- 生徒が正しくスペルを覚えているのか確認することができる
- 公平性を保つことができる
デメリット
- 採点者の負担が大きい
- 紙の印刷に時間がかかる
- テストを配る、回収する。そして採点後また配る、という手順があり面倒
実際、2015年に発表された記憶の呼び起こしに関する実験の結果では、手書きで書いた方がタイピングより単語を思い出すことができる、ということが示されました。
こう考えると、手書きの単語テストは学習者にとってのメリットが大きいことがわかります。
次にタイピングで単語テストを実施する際のメリット・デメリットを整理してみましょう。
タイピングで単語テストを実施するメリット・デメリット
メリット
- 採点が楽
- 紙の印刷をする必要が無い
- 結果をすぐに知らせることができる
- テスト紛失の心配がない
- 生徒はどこを間違えたのか瞬時に確認することができる
デメリット
- タイピングが苦手な生徒にとって公正性が無くなる
- 実施する生徒側のタブレットが充電されていない、ネットワークの不調により試験が中断される等の心配がある
- 後ろから覗かれる可能性が高まる
一方、タイピングで単語テストを実施する場合、教員側のメリットが目立ちます。
生徒のことを考えるのであれば紙での実施が妥当と言えそうです。
それでもタイピングで単語テストを実施したい
手書きのテストの方が学習者にとってメリットが大きいことはわかりましたが、それでもタイピング形式でテストをしたい教員も多いかと思います。
なぜなら圧倒的に教員に対するメリットが大きいからです。
タイピングで単語テストを実施したいのであれば、考えられるデメリットを1つ1つ解消していく必要があります。
そのための準備をまとめてみました。
タイピング形式で単語テストをする際にやるべき準備
- メモ用の白紙をテスト開始時に配る
- テスト時間をいつもより多めにとる
- 充電をするように念押しをする
- 万が一の充電切れやパソコン忘れを想定し、紙でのテストプリントも数枚用意しておく
- 後ろから見られないように、正しい姿勢でテストを受けさせる
これらは実際私がタイピングで単語テストを実施する際に実行していることです。
メモ用の白紙を配ることにより、単語のスペルを思い出したり、見直しをするときの確認用で使ったりすることができます。
実際生徒にメモ用紙がある場合と無い場合、どちらが良いか聞いたところ、圧倒的にメモ用紙がある方がいいと答える生徒が多かったです。
また、タイピングが苦手な生徒のために、通常手書きで行う時間より多めに時間を取ります。
全生徒がタイピングに慣れてきたら時間を短くしていきます。
このような工夫をすることで、特定の生徒が不利な状況になることをできるだけ避けることができます。
結論:どちらで単語テストを実施すべきなのか
調べれば調べるほど、基本単語テストは手書きで実施した方がいい、ということがわかりました。
しかし、もし今後生徒のタイピングスキルがあがり、手書きのように自由自在に操れるような時代が来れば、タイピングでの単語テストが推奨されるでしょう。
事実、スウェーデンの学生に向けて行われた実験では、スウェーデンの中等教育の生徒たちは、手書きよりもコンピュータでタイピングする方が、外国語の語彙を効率的に学習できることが示されています。
これは、若い子たちにとってタイピングがより身近になってきたからだと言えるとおもいます。
そして、そんなタイピングでの単語テストも、しっかり準備をすればある程度の公正性を担保することできる、ということもわかりました。
以上のことから私は基本、単語テストはタイピング形式で実施していこうと思います。