英語の勉強なんてしたくありません。日常的に使うわけでもないし、やる気がでません。
皆さんはこんな発言をする生徒を見たことはありませんか?
英語を修得するためには、どうしてもある程度時間を費やす必要があります。
理想を言えば、生徒が自分で英語に興味を持ち、授業外でも自主的に勉強してくれることでしょう。
しかし、そのような生徒はクラスに数名いるかいないか、です。
高いモチベーションを持つ生徒は、ほっといても英語を勉強してくれます。
一方、モチベーションが低い生徒は授業中も集中力が欠けていたり、授業外で自主的に英語に触れることなんてほとんどありません。
それではできる子と、できない子の差は広がる一方です。
英語教師として大事なのは、英語のモチベーションが低い、もしくはそれほど高くない生徒のやる気を引き出すことです。
そしてそれは、教員の工夫次第でどうにかなるかもしれません。
これ以上、上位層と下位層の差が広がらないためにも、生徒のモチベーションを高める具体的な方法を5つ紹介します。
- モチベーションを上げるポイントは5つ
- 適切な目標設定
- フィードバックの提供
- 教材の工夫
- 授業内外でのコミュニケーション
- クラスの雰囲気
第二言語習得においてモチベーション向上は成功につながる重要なポイント
教師として生徒のモチベーションを上げる工夫はできる
生徒のモチベーションを向上させるための方法1:目標設定
第二言語習得において、目標設定は非常に重要な役割を持ちます。
目標が高すぎても低すぎても効果はありません。
適切な目標設定が大事です。
クラッシェンが提唱したインプット仮説においても現在のレベルよりも僅かに高いレベルのインプット(理解可能なインプット)の重要性を説いています。
適切な目標を設定することで、生徒は学習に対する方向性を明確にし、やる気を引き出すことができます。
以下では、目標設定の効果と、生徒にどのような目標を設定してもらうべきかについて詳しく説明します。
目標設定の効果について
適切な目標設定には以下のような効果があります。
1.やる気を引き出す:目標を設定することで、生徒は学習に対する意欲を高め、やる気を引き出すことができます。
2.方向性を明確にする:英語を学習する理由は人それぞれです。ゴールを設定することで、無駄な時間や労力を使わず、効率的に学習することができます。
3.成果を実感する:目標を設定することで、生徒は自分が学習した成果を実感することができます。成果を実感することで、自信を持って学習に取り組むことができます。
生徒にどのような目標を設定してもらうべきか
生徒に目標を設定してもらう際には、以下の点に注意する必要があります。
1.具体的で現実的な目標を設定する:目標は、具体的で現実的なものである必要があります。例えば、「今週の金曜日までにTOEICのリーディングパートを一回分解析する」といった具体的な目標を設定することで、生徒はより効果的に学習に取り組むことができます。
2.達成感を得られるようにする:目標は、達成感を得られるように設定することが重要です。目標が高すぎると達成感を得られず、逆に低すぎると達成感が得られないため、適切な目標を設定する必要があります。
授業の初めにこの授業で頑張りたいこと、理解したいことをワークシートやノートに書かせたり、もしくは学期を通した目標を考えさせたりするのもいいでしょう。
目標を立て、それを振り返り、軌道修正しながら自分の理想とするゴールへと近づいていくことが大切です。
そのような時間を授業内に組み込むことで、授業は受動的なものではなく、能動的なものへ変わります。
生徒のモチベーションを向上させるための方法2:フィードバックの提供
フィードバックの効果について
適切なフィードバックを提供することで、生徒は自分の誤りを正し、自信をつけ、意欲的に活動に取り組むことができます。
しかし、過度なフィードバックは逆に生徒のやる気を削ぐ場合があるので、フィードバックの種類を整理し、その生徒やその場面に合ったフィードバックを提供していくことが大切です。
フィードバックの種類
Lyster and Ranta(1997, p. 46-48)によると、フィードバックには、6種類あるといわれています。
- 明示的訂正(explicit correction)
- リキャスト(recasts)
- 明確化要求(clarification requests)
- メタ言語フィードバック(metalinguistic feedback)
- 誘導(elicitation)
- 繰り返し(repetition
その詳しい内容についてはまた別の記事にまとめます。
大事なのは、適切なフィードバックを授業内外で継続的に行っていくことです。
全て教師が行うと負担もすごいので、生徒同士でフィードバックしあったり、自分で自分のことをフィードバックするような活動も取り入れてみるといいかもしれません。
生徒のモチベーションを向上させるための方法3:興味関心のある教材の使用
第二言語習得において、教材選びはとても大事です。
特に日本はEFLの環境なので、意識をしないと英語と出会う機会は少ないです。
ただし、時代はESLとかEFLとかで分ける時代ではなくなっていると感じます。
例えば、生徒はTikTokを通してたくさんの洋楽を知っています。
また、オンラインゲームの中で外国人とプレーする機会もあります。
大事なのは、実は英語が身の回りにあふれているということに気づかせることです。
そしてそのような教材をうまく選ぶ、ということです。
基本的には教科書があるのでそれを使うことになると思いますが、教科書と生徒たちの現実世界を結ぶ懸け橋になるような教材を用意しておくといいでしょう。
それでは興味のある教材の効果と、教材選定のポイントについて説明します。
興味関心のある教材の効果について
興味関心のある教材を使用することで、以下のような効果が期待できます。
- モチベーションの向上:生徒は興味関心のある教材を使うことで、学習に対する興味や関心が高まり、モチベーションが向上します。
- 記憶の定着:興味関心のある教材を使用することで、生徒は内容をより深く理解し、長期的な記憶の定着に繋がります。
生徒の興味関心を引くための教材選定のポイント
次のポイントに注意しながら、興味関心のある教材を選定することが大切です。
- 生徒の興味関心に合った教材を選ぶ:生徒の興味関心に合ったテーマや内容の教材を選びましょう。TikTokで使われている洋楽や、Youtuberをうまく絡めて話を作ったりすると生徒の食いつきが良いです。また、流行りの映画なども有効です。
- 難易度に注意する:生徒が理解できるように、適切な難易度の教材を選びましょう。
- 多様な教材を使用する:テキストだけでなく、映像や音声、実際に使用する場面が想定される教材など、多様な教材を使用しましょう。
- 文化的背景を考慮する:英語圏の文化背景に関する知識が含まれている教材を選ぶことで、生徒は英語圏の文化や習慣を理解することができます。
- 最新情報にアップデートする:教材は古くなるものですので、最新のトピックや情報が含まれているものを選ぶことで、生徒の興味を引き続けることができます。いつまでもビートルズではだめということです。(私はビートルズ好きですが)
生徒のモチベーションを向上させるための方法4:クラス内外での英語使用の機会
第二言語習得において、英語を実際に使うというのはとても重要な役割を果たします。
しかし、実際に英語の授業でスピーキング活動を行ってもなかなか話してくれなかったり、また授業外で英語を使う機会が無かったりと、生徒が実際に英語を使う機会というのはとても少ないです。
ただ、だからといって生徒は英語を話したくないわけではありません。
うまく誘導すれば英語を使って話してくれますし、それを自信にしてくれます。
例えば、授業中はそこまで活動的でなかった生徒が、町で外国人に道を聞かれてそれに対してうまく返すことができた、という話を嬉しそうにしてくれたことがありました。
そしてその生徒はそれから意欲的に活動へ取り組むようになりました。
そのような成功体験が生徒のモチベーションを上げ、英語を使用する楽しさにつながることを実感しました。
英語の授業内においても、リアルなシチュエーションを提供し、話さないといけないという環境にしていくことで同様な効果を期待することができます。
具体的にその効果と取り組みについてみていきましょう。
コミュニケーションの効果について
英語を話すことに不安を感じる生徒にとって、コミュニケーションをとることは非常に難しいことです。
しかし、クラス内外で積極的にコミュニケーションをとることで、以下のような効果が期待できます。
- 自信の向上:英語でコミュニケーションをとることで、生徒の自信がつきます。英語を話すことに慣れていくと、徐々に緊張感が和らぎ、自然な流れで英語が話せるようになっていきます。
- 聞く・話すスキルの向上:コミュニケーションをとることで、生徒は英語を聞く・話すスキルを向上させることができます。また、相手とのやりとりを通じて、表現方法や言い回しについて学ぶことができます。
- 文化理解の深化:異文化の人とコミュニケーションをとることで、生徒は異文化に対する理解が深まります。また、異文化に興味を持つことで、英語を学ぶモチベーションにもつながります。
生徒がコミュニケーションを取りやすくするための取り組み
・事前準備をさせる :話す内容を考えさせる時間を取ることが有効です。その際はどのように話す内容を組み立てればいいのか順序だてて考えさせるとより効果的です。
・同じ内容を話させる:一度話した内容をもう一度別のペアになって話してみる活動も有効です。2度目は1度目よりスムーズに話すことができるの、すぐに成長を実感することができます。1度目と2度目の間に修正する時間を設けてもいいかもしれません。
・シチュエーションを具体的に示す:話すためにはその理由が必要です。ただ英語で話しなさい、と言われても、頭のどこかでは、なんで同じ日本人同士なのに英語を話さないといけないの?と思ってしまいます。そうならないためにも、具体的なシチュエーションをこちらで設定し、役になり切って話させる等の活動が必要になってきます。
生徒のモチベーションを向上させるための方法5:ポジティブな雰囲気の醸成
ポジティブな雰囲気の効果について
話しやすい環境と話しづらい環境ってありますよね。
母国語ですらためらってしまうのですから、それが第二言語であればなおさらです。
第二言語習得論にはWTC(Willingness to communicate)という考え方があります。
これは、第二言語でコミュニケーションを実際にとるまでの心理的な過程を示しています。
この考えをうまく理解することで、教室を話しやすい環境に変えることができます。
WTCについてはまた別の記事で詳しく取り上げます。
ここでは発言しやすい教室環境づくりについて考えていきましょう。
生徒に安心感を与え、学習意欲を高めるための取り組み
- クラスルールの設定
グランドルールを作りましょう。全員が共通して理解しているルールがあることで、安心して発言をすることができるかもしれません。
- 教師のポジティブな姿勢
教員が英語の使用に対してポジティブな態度をとることが大切です。
ここで大事なのは、文法的に正しくなくても伝わることの大事さを感じてもらうということです。
文法的な違いを指摘してくる生徒もいるでしょう。そういう発言があればそれは逆にチャンスです。
そんなときは「けど、意味は大体伝わったでしょう?大事なのは話す中身です。第二言語で英語を学んでいる外国人はとにかく喋ります。けどよくよく聞いてみると文法的な誤りもあります。しかし彼らはそんなこと気にしてません。そしてそういう人たちが最終的には英語を上達させていく姿を見てきました。みんなも間違いを恐れずにどんどん使っていこう。」と伝えると良いでしょう。
文法を軽視しているわけではありません。
クラッシェンの提唱する仮説のうちの1つである、モニター仮説が過剰に働きすぎて、英語を話すことをためらっている生徒の背中を押してあげることが大切なのです。
- 生徒同士の交流
教師が前で話し続けている授業だと、生徒がいざ発言するとなった場合周りから一気に注目されることになり発言のハードルが高まります。
可能な限り、グループワークやペアワークを取り入れることで、話しやすい環境を作ることができます。
また、最終的には全体の前で発表するような活動も、事前に小グループで練習させることでハードルを下げることができます。
ここで発言しても誰からも馬鹿にされたりしない、と思える環境をいかに作っていけるかが大事になります。
まとめ
生徒のモチベーションを向上させるためのポイントのまとめ
本記事では、生徒の第二言語習得においてモチベーションが重要であること、そして生徒のモチベーションを向上させるための5つの方法を紹介してきました。
モチベーションを高めることでより多くの生徒が授業に参加してくれるようになります。
勝手に学習するようになればもうこっちのもんです。
是非授業づくりの参考にしてみてください。